この映画、実は先月観たんだけど、忙しくて今日まで感想が書けなかった。
ボクが「ハマのメリーさん」という名前を初めて知ったのは大学生の頃。
中島らものエッセイだったと思う。
白塗り顔の老女が毎夜横浜の伊勢佐木町に立っている・・・ボクは最初、らも一流の冗談だと思っていた。
ハイカラドレスに身を包んだ全身真っ白な老娼婦。
しかも重い荷物を引きづりながら横浜の街を徘徊していたらしい。
にわかには信じられない話だった。
ヨコハマメリーって、もしかすると都市伝説のひとつなのかも・・・時間が経つにつれ、そう思うこともあった。
自分の中でずっと気になっていた、その伝説的な人物についてのドキュメンタリー映画。
映画館に足を運ばない理由はなかった。
1995年を境に横浜の街から突如として姿を消したメリー。
その正体と95年以降の行方探しを縦軸に、メリーと親交のあった人たちの証言とその人生を横軸に絡め合いながら映画は進んでいく。
この映画、主役は「ヨコハマメリー」ではなかった。
もちろん重要なキーワードであり、映画を進行する上での重要な装置ではあったが、主役はあくまで戦後の横浜の街とそこに住む人々だったような気がする。
占領下の日本。
男たちが意気消沈して肩を落とす中、女たちは街頭で必死に米兵らと戦っていたという証言がとても印象的だった。
ゲイのシャンソン歌手、元次郎の生き様と、メリーと重なる母親への思慕が映画に奥行きを与え、人の情けの深さにグッと来る。
経済発展する街と一緒に変わっていく横浜の人々の生活と風俗。
そんな中で、白塗りの老女がいつまでも変わらず街に立つ風景。
並べた椅子の上で寝ているメリーさんの写真が目に焼き付いて離れない。
彼女は果たして幸せだったのか、それとも不幸だったのか。
おそらくは二度と帰ってこないとわかっていた将校を、いつまでも待ち続けた若き日々。
その胸の内は彼女本人でしかわからない。
結局・・・この映画、メリーさんの行方以外はほとんどわからないままラストを迎える。
化粧を落としたキリッとしたメリーさんの横顔。
丁寧な言葉で綴られた手紙。
この人は白塗りの化粧で「ヨコハマメリー」を演じ続けていたんじゃないかという気にさえなってくる。
元次郎がメリーさんの手を取って画面から消えて行くシーン。
メリーさんのいなくなった横浜の街。
「ヨコハマメリー」という戦後のひとつの時代の終焉を見た思いがした。
あと・・・根岸屋の最後の芸者さん・・・彼女もめっちゃかっこよかったなあ。